書評

書評『幸福について』ショーペンハウアー|幸福とは認識の力

ショーペンハウアー『幸福について』

ショーペンハウアーの『幸福について』を読みました。

「人生の幸福とは、自分は何者なのかで決まる」との教えですが、よく頷けます。

好むと好まざるとに関わらず、他人と比較しやすい現代において、「幸福の本質」を深掘りしながら考えられる1冊でした。

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ショーペンハウアー『幸福について』

ショーペンハウアー『幸福について』

幸福について』は、『筆のすさびと落穂拾い』という作品から『処世術箴言』を全訳、タイトルを変更したとされます。

タイトル幸福について
著者ショーペンハウアー
翻訳者鈴木芳子
出版光文社古典新訳文庫
初版発行2018年1月20日
Kindle版あり

アルトゥール・ショーペンハウアーは、自由都市ダンツィヒにて1788年、裕福な家庭の長男として生まれ、若き日は、ゲーテにその才能を認められます。さらに、没後はニーチェや森鴎外の思想にも影響を与えたと。

「人生における幸福」が定義され、その定義に対して、持論と偉人の言葉を交えながら説得力を持たせています。

ショーペンハウアー『幸福について』の書評

ショーペンハウアー『幸福について』

重要なのは「感受力」だ

「幸せって、けっきょく感じ方だよね」と、ショーペンハウアーは説きます。

人生において何に遭遇し、何がその身にふりかかったのかよりも、本人がそれをどう感じたのかが問題であり、何事も感受力の質と程度が問題となる。

引用:『幸福について』ショーペンハウアー / 光文社古典新訳文庫 / P.29 L.2

「死ぬまでに見たい絶景」を目の前にして、感動する人もいれば、感動しない人もいる。同じように、快・不快も感受力によって定義が変わると。

先日読んだ『論理哲学論考』でも「世界は、複数の事実でできている」とありました。やはり、事実に対する見解こそ、幸福感を左右するのかもなぁ。

関連記事:書評『論理哲学論考』ヴィトゲンシュタイン

 

快楽ではなく「苦痛なき状態」を追う

「そもそも幸せは漠然としている」と考えたのか、ショーペンハウアーは、幸福ではなく不幸に目を向けます。

賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める

引用:『幸福について』ショーペンハウアー / 光文社古典新訳文庫 / P.190 L.2

上の引用元は『ニコマコス倫理学(アリストテレス)』からですが、簡素かつ本質的だと感じます。

幸せの程度は千差万別で、ハッキリと提示ができない。だからこそ、みんな迷うのかもしれない。そこで、ショーペンハウアーは「快楽を求めず、苦痛なきを求めよう」として、逆説的に幸福に近づけると考えたのでしょう。

たしかに、日常生活から不快や不満となる要素を減らしたら、快適な時間が増えた経験はありますね(嫌な人と関わらないとか、面倒なことは効率化するとか)。

 

あとがき

ショーペンハウアーの『幸福について』の感想を書いてみた。

「何を幸福とし、何を享受するか」と定義したことで、幸福に輪郭をつくりながら多様性を残した点が好きだ。

また、ショーペンハウアー自身、多くの古典に触れて思考を熟成させたことを感じられた。自分は何をして生きるのか? 何が大切なのか? 時間に忙殺されやすい現代において、改めて日常を見つめ直すきっかけとなる1冊だった。

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