書評

書評『生の短さについて』セネカ|時の番人として

セネカ『生の短さについて』

ローマの哲学者・セネカの『生の短さについて』を読みました。

「無形で見えない時間こそ、大切にしなければいけない。無意識に奪われてはいけないのだ」と、力説しているのが印象的でした。

片手に収まる小さなデバイスに、毎日時間を吸い取られる現代において、2,000年の時を超えて諭してくれる貴重な内容が収められています。

セネカ『生の短さについて 他二篇』

セネカ『生の短さについて』

生の短さについて』は、紀元49年ごろ(約2,000年前!)に書かれた倫理書

タイトル生の短さについて
著者セネカ
翻訳者大西英文
出版岩波文庫
初版発行2010年3月16日
Kindle版あり

著者・セネカは、後期ストア派の代表的な哲学者として活動。ローマ帝国の中枢で政治にも深く関わるなどしています。

当著は、表題「生の短さについて」に加え、「心の平静について」、「幸福な生について」が収められた1冊。

セネカ『生の短さについて』の書評

セネカ『生の短さについて』

「時の浪費家」とならないように

「時の浪費家になるな」と語るセネカは、約2,000年の時を超え、現代人の生き方を警告しているように感じられます。

自分の生となると、他人の侵入を許し、それどころか、自分の生の所有者となるかもしれない者をみずから招き入れさえする。自分の金を他人に分けてやりたいと望む人間など、どこを探してもいない。ところが、自分の生となると、誰も彼もが、何と多くの人に分け与えてやることであろう。

引用:『生の短さについて 他二篇』セネカ / 岩波文庫 / P.16 L.2

スマホがますます便利になり、SNSやゲームに費やす時間が問題となっている現代。また、時間と引き換えに得たお金もまた、小さなデバイスの広告に流され、知らず知らずのうちに消えていく……。時を浪費していないだろうか? 立ち止まって見つめ直すきっかけになりました。

現代人の「時の浪費」を見たら、セネカは卒倒してしまうんじゃないか、とさえ思えます。

時を誰よりも惜しむ「時の番人」として

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」とも語るセネカ。無形かつ可視化されないからこそ、寸刻たりとも無駄にしてはいけないと警告。

いいかね、これは本当のことだ、人間的な過誤を超越した偉人の特性は、自分の時間が寸刻たりとも掠め取られるのを許さないことなのであり、(中略)時を誰よりも惜しむ時の番人として、自分の時間と交換してもよいと思う価値のあるものは、彼らには何も見出せなかったのである。

引用:『生の短さについて 他二篇』セネカ / 岩波文庫 / P.26 L.10

何かに忙殺される人間であってはならず、時を他人の支配下に置いてもならない。それは生への自覚が希薄であるという。「閑暇」というキーワードを出しながら「忙殺」は生を短くするとも。

老年という名の「終着点」は突然現れ、最期に悟るのは、費消された雑多な時間の数々とも……。ぼくは今23歳ですが、必ず訪れる終着点にて使い果たした時間の濃度に満足するために「時を惜しむ時の番人」は意識していたいです。

 

あとがき

セネカ『生の短さについて』の感想を書いてみた。

自分の生の所有者は、自分でなければいけない。時間を支配され、掠め取られてはいけない。当たり前すぎて、つい忘れてしまう内容を含みながら、今日の過ごし方を考え直せる1冊だった。

また、古典をいくつも読んでいると、パズルのピースがはまる気持ちよさがある。最近読んだ『星の王子さま(サン=テグジュペリ)』から引用して、あとがきを締めてみる。

いちばん大事なものは、目には見えない……

引用:『星の王子さま』サン=テグジュペリ / 新潮文庫 / P.117 L.8
ABOUT ME
eba(エバ)
当ブログ『ebalbum』の運営人。 読んだ本の感想、電子書籍サービスの使い心地を紹介しています。 ミステリー小説、エッセー、ギリシャ・ラテン文学が好き。